見汐麻衣特別寄稿

『熱海と愛とプロレスと 』

 

6月某日週末。

急に思い立ち、熱海へ行くことにした。レンタカーを借り、午後に東京を出る。

夕方の東名高速は車もまばら。厚木I.Cを過ぎ、小田原を通過、湯河原も経て、熱海ビーチラインをゆく。真っ青な海と地平線。サーフィンに興じる男達。波は高い。サーフボードに身を委ね泳ぐ姿をただポーッと眺めているだけでいい。気持ちがいい。

熱海に到着して町を歩き、喫茶店に入るか迷い、また歩く。

なにもしないということを心ゆくまでできる町、熱海。町を静かに彩る形(看板のフォント、建物の並びなど)に胸が熱くなり海へ向かう。五月蝿くないネオンサインがたまらない。浜で潮風をあびながら一服し、缶ビールを呑む。

なにもしていないのにまた此処へきたいと思わせる何かがある。いつのまにか住みたいとさえ思いだす始末。

夜に泊まった宿の両隣では愛のプロレスが始まってしまい、耳を塞いだところでいつおわるかわからない故、頭の中でUNICORNの「開店休業」を歌う。何度もリピートして歌う。仕方ないじゃない。だって、熱海の夜だもの。と、自分に言い聞かせながら缶ビールをあおる。

 

そうだそうだ、初めて「熱海」という言葉を意識したのはUNICORNの曲「開店休業」だった。

 

♪(前略)言葉は大切だね/仲直りの情事/君は特に奇麗さ

今日はとっても天気がいいよね/おまけに鳥も泣きじゃくりだし

そんな日には午後から/そうね熱海にでも(後略)

 

「熱海」という字面になにかこう、艶やかな匂いを感じるのは何故だろうかと考えていた。仲直り、情事、この曲に出てくる歌詞のせいなのか。田舎で暮らしていた当時、13歳の頭の中では「熱海」という町は秘密の時間を重ねるような、どこか大人のめくるめく世界をイメージさせるものだった。

1950年代、熱海は新婚旅行のメッカだったそうだ。東海道新幹線が開通し、遠方への旅行が容易になる前のことだろう。新婚旅行に家族旅行や慰安旅行、きっとたくさんの人達が思い思いの時間と夜を過ごしたのであろう熱海。愛と笑いの夜、熱海。涙の熱海。なんだこれは、熱海をつけると何処にもなかった筈の物語が頭の中、どんどん浮んでくるじゃないか。

熱海の女。二人の熱海。振り向くな熱海。部屋とYシャツと熱海。いかん、脱線していく。

熱海で過ごす時間を増やしていきたい。ここで暮らす人との出会いも含め、今の熱海がどんな町なのかもっと知りたい。

これからの人生、時間ができたら頻繁に訪れたい町、熱海。年を経るごとに愛しくなる町、熱海。あぁ、熱海。あなたのことをもっと知りたいという思いを胸に東京に戻り、クリテツさんが在籍するあらかじめ決められた恋人たちへと、VIDEO君のライブを観に渋谷へ行った夜。三人で談笑しながら「いやぁ、熱海いいよね。」なんて話をしているうちに「熱海でライブがしたい!」という話になり、あっという間に実現することになった。三者三様、熱海LOVEの気持ちが動いた夜。

熱海でライブができるなんて、感無量。嬉しい。

9月3日、夏の終わり、一泊二日の小旅行(じゃなくても)、熱海の夜を一緒に楽しみましょう。お待ちしております。

9・3フライヤ